企業チャンネル

GOPROは企業チャンネルでがっちり

YouTuberに人気のGOPROが22年第一四半期の決算を発表しましたね。「サブスクリプション収益を含むGoPro.comの収益は、前年比8%増の8,900万ドル、つまり総収益の41%でした。サブスクリプションとサービスの収益は、前年比73%増の1900万ドルでした。」
と、サブスクリプションの売り上げを増やしています。「GoProってカメラメーカー(製造業)ではないの」と思っている方も多いですが、2年ほど前からサブスクリプションモデルを開始し、4Kなど重い映像を自分のクラウドスペースに無制限でアップロードできたり、ECからの付属品は40%オフだったりと魅力的な定額サービスを開始しています。

GoProは創業者がサーファーで、サーフィンなど屋外での激しいスポーツを撮影できないかという発想から生まれたアクションカメラです。その製品コンセプトが受け入れられ、Xスポーツなどの愛好家やアウトドア派などに支持されています。

ここでGOPROのYouTubeチャンネルを見てみましょう。

GoPro YouTube チャンネル

チャンネル登録者はなんと1060万人、Instagramは1911万人 合計すると3000万人近くにもなります。これはもう一つの国レベルのファンを囲いこんでいることになりますね。オーストラリアの人口よりはるかに多いです。
チャンネルのコンテンツも豊富で、ほぼ3日に一回は動画を投稿しています。
サブスク型のサービスとなると、いかにしてそのサービスを継続的に好きにさせるかが重要なポイントです。そう継続的に好きにさせること、つまりファンを作ることでもあります。(GOPROは上場企業ですので、継続率やチャーンレートを開示することで事業の安定性を株主や投資家にアピールすることができます)

GoProがYouTubeチャンネルに力を入れている理由としては、

①既存顧客へのロイヤリティ向上
既存顧客へ製品の有用性をアピールし、継続的に使ってもらうこと。
②新規顧客の獲得
コンテンツを通じた潜在・顕在顧客への製品の訴求

YouTubeにおける動画コンテンツが、YouTubeアルゴリズムによって、動画を作成したい、カメラを探している という人とマッチすることで、顕在顧客へコンテンツという形でリーチする、認知する機会を得るわけです。

さてここで復習ですが、スマホやSNS、またパーソナライズするテクノロジーの進化によって現代型消費者はインターネット初期のような情報を引き出しにいく(検索する、など)から、情報をプッシュで受け取る形に変化してきています。つまりプル型情報取得から、プッシュ型情報取得型に変化しているということです。こうした情報取得形態に変化に気づかない日本企業がまだ多く、デジタルマーケティングをプル型と認識したまま、サイトの拡充やSEOなどに予算を割り振って、SNSなどのプッシュ型メディアは低予算で放置している場合が多いですね。SNS広告は活用するものの、自社のコンテンツに対する認識が本当に低いです。

SNSやYouTubeなどは、個人の過去の閲覧履歴などから、その人毎のパーソナルな趣味趣向情報を把握して、その人にとって最適な「コンテンツ」を配信するというアルゴリズムです。
GoPro は消費者のそうした情報取得形態の変化を踏まえて、積極的にSNSなどのグローバルプラットフォームを活用して、上記の①既存顧客へのロイヤリティ向上②新規顧客の獲得 を実現しているのです。

こういう話をしているとたくさんの方から、
YouTubeはGoProがこうしたコンテンツマーケティングを積極活用して収益源であるネット広告の収益の妨げになりはしないかと質問されることがあります。
はい、その通りでGoogle(YouTube)もインスタグラムも主な収益源は広告ですので、うまくコンテンツ活用すれば、広告を減らすことができます。
ただ一方では、こうした企業が積極的に優れたコンテンツを発信することで、YouTubeでの利用率利用時間が上がれば、それだけデジタル広告の表示回数、インプレッションが上がることで全体収益が上がるのです。「優良なコンテンツ」と「ペイド広告」のバランス、最適化をリアルタイムで演算して、収益最大化を図っているのです。

こういう動画を撮ってみたい デジタル体験と考えれば、GoPro社が描いているカスタマージャーニーはこう考えられます。この仕掛けによって、ユーザーは常にGoPro体験を重ねることによって、常に「今度はこういう動画を撮ってみたい」「今週末は動画を撮りにキャンプに行きたい」と考えるようになります。

企業がYouTubeの公式チャンネルを計画する場合、こうしたデジタル体験としてコンテンツを設計する必要があります。次回はこのYouTubeにおけるコンテンツ設計戦略についてお話ししてみたいと思います。

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